楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングを複数運営していると、注文が増えるにつれて受注処理が追いつかなくなってきます。各モールの管理画面を開いて、CSVをダウンロードして、Excelに転記して、チェックして——という作業が、毎日積み上がっていく。
ミスが怖いからチェックを増やす。チェックを増やすから時間がかかる。気づけば受注処理だけで午前中が終わっている、という状況は珍しくありません。
この記事では、複数モールの受注管理をツールで効率化したいと考えている方に向けて、ツール選びで見るべきポイントと導入前に確認しておきたいことを、15年の実務経験をもとにお伝えします。
複数モール運営で受注管理ツールが必要になる瞬間
楽天だけのときは、なんとかなっていた。
そこにAmazonが加わり、Yahoo!ショッピングも始めた。注文が増えるのはいいことです。ただ、モールが増えるたびに、朝の受注確認にかかる時間も増えていきます。
それぞれの管理画面を開いて、CSVをダウンロードして、Excelに転記して、チェックして——。売上は伸びているのに、気づけば午前中が受注処理で終わっている。
セールや繁忙期はさらに厳しくなります。注文が集中する日の翌朝、処理が追いつかなくなって初めて「このままではまずい」と感じる。
手作業で起きる3つの問題
①ミスが起きやすい構造になっている
受注管理のミスは、担当者の不注意というより、手作業そのものがミスを生みやすい構造になっています。
各モールからCSVをダウンロードして、Excelに転記して、倉庫用のフォーマットに整形する。この工程が毎日繰り返されます。手順が多いほど、ミスが入り込む余地も増える。数量の入力ミス、注文番号の転記漏れ、送付先の取り違え——こうしたトラブルは、手作業運用では起きやすい状態になっています。
ミスそのものより問題なのは、ミスを防ぐために生まれる作業です。二重チェック、三重チェックの体制を組んでも、確認にかける時間と人員が増えるだけで、根本的な解決にはなりません。
②チェックに時間がかかる
受注業務で時間を取られるのは、処理そのものより確認作業です。
「この注文、倉庫に連携できているか」「発送完了メール、送り忘れていないか」「キャンセル分、在庫に戻したか」——手作業運用では、こうした確認が随所に発生します。注文が増えるほど、確認の総量も比例して増えていく。売上が伸びるほど、業務が重くなる構造になっています。
③担当者が変わると業務が止まる
受注業務を特定の担当者だけが把握している状態は、思った以上にリスクがあります。
手順がマニュアル化されていなかったり、「やってみないとわからない」部分が多かったりすると、その担当者が休んだとき、辞めたときに業務が止まります。引き継ぎのたびにミスが増え、教育にも時間がかかる。こうした属人化は、規模の小さなEC事業者ほど起きやすく、気づいたときには手がつけられない状態になっていることも少なくありません。
受注管理ツールを入れると何が変わるか
受注管理ツールを導入すると、各モールの注文データが自動で取り込まれます。CSVのダウンロードも、Excelへの転記も、倉庫への指示出しも、ツールが担う。手作業の工程が減れば、ミスが入り込む余地も減ります。
二重チェックの体制が不要になる、あるいは確認の頻度を大幅に減らせる——これが導入後に最初に実感することです。
状態の可視化も変わります。どの注文がどのステータスにあるか、出荷が完了しているか、キャンセルが反映されているか。それがひと目でわかる状態になる。「確認のための確認」に時間を使わなくて済むようになります。
担当者が変わっても引き継ぎがしやすくなるのも、大きな変化のひとつです。業務フローがツールに沿って標準化されるため、特定の担当者に依存しない体制がつくれます。採用・教育コストの削減という意味でも、じわじわ効いてくる部分です。
ツール選びで見るべきポイント
受注管理ツールは複数あります。機能だけで比べると判断しにくいので、自社の状況に合わせて以下のポイントで整理すると選びやすくなります。
連携できるモール・カートを確認する
まず確認したいのは、自社が運営しているモールやカートにすべて対応しているかどうかです。楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングは主要ツールであればほぼ対応していますが、自社ECカートや物流システムとの連携はツールによって差があります。導入後に「連携できなかった」となるのが一番困るので、事前に確認しておく必要があります。
受注件数と料金の兼ね合い
多くのツールは月間受注件数に応じた料金体系になっています。受注件数が少ない段階では月額費用が割高に感じることもあります。現状の受注件数と今後の増加見込みを踏まえて費用対効果を試算しておくと、社内での判断もしやすくなります。
サポート体制
初期設定は思った以上に手間がかかります。社内にシステムに詳しい担当者がいない場合は、導入時のサポートが手厚いかどうかも選定の基準になります。
主要ツール紹介
ネクストエンジン
NE株式会社が提供する受注・在庫管理ツールです。楽天・Amazon・Yahoo!ショッピングをはじめ、業界最大級の連携チャネル数を誇り、倉庫管理システム(WMS)や送り状発行システムなど外部サービスとの連携も豊富です。複数モールを幅広く運営している事業者に向いています。
初期費用は無料、月額基本料金は3,000円〜の受注件数に応じた従量課金制です。機能が豊富な分、使いこなすまでにはある程度の慣れが必要です。30日間の無料トライアルがあるので、まず触ってみるところから始めやすいツールです。
TEMPOSTAR
SAVAWAY株式会社が提供する受注・在庫管理ツールです。アパレルEC業界での導入実績が豊富で、カスタマイズの柔軟性が高く、自社独自のシステムとの連携にも対応しています。初期費用は無料、月額11,000円〜で、従量課金制と定額制の両方から選べます。
専任のサポート担当がつく体制が整っており、初めてツールを導入する事業者や、社内にシステムに詳しい担当者がいない環境でも導入しやすい設計になっています。
CROSS MALL
株式会社アイルが提供する受注・在庫管理ツールです。受注管理・在庫管理・商品登録・発注仕入れ管理まで一通りの機能をカバーしています。初期費用は無料、月額5,000円〜と3ツールの中では比較的リーズナブルな料金設定です。
モール・カートの仕様変更への対応スピードが評価されており、頻繁に仕様が変わる楽天やAmazonを運営している事業者には安心感があります。
導入前に確認しておくこと
ツールを契約しても、すぐに業務が改善するわけではありません。「導入したはいいが、使いこなせていない」という状態を避けるために、事前に整理しておきたいことがあります。
現在の業務フローを言語化しておく
今の受注業務がどういう手順で動いているかを、導入前に整理しておくことが重要です。ツールに合わせて変える部分と、既存のフローをそのまま使う部分を切り分けておくと、初期設定がスムーズになります。
倉庫・物流会社との連携を確認する
受注処理を自動化しても、倉庫への指示が手作業のままでは効率化の効果が半減します。物流会社のシステムがツールと連携できるかどうかを、導入前に確認しておく必要があります。
無料トライアルで操作感を確かめる
主要ツールの多くは無料トライアルを提供しています。機能の比較だけでなく、実際に触ってみて「自社のフローに合わせて使い続けられるか」を確認するほうが、導入後のミスマッチを防げます。
まとめ
複数モールの受注管理を手作業で回していると、ミス・確認作業・属人化という3つの問題が少しずつ積み上がっていきます。注文が増えるほど深刻になりますが、日常業務のなかでは見えにくい。気づいたときには、繁忙期に処理が追いつかなくなっていた、というのはよくあるパターンです。
受注管理ツールは、こうした問題をまとめて解消する手段です。処理の自動化だけでなく、業務の標準化と可視化によって、受注処理に費やしていた時間を、集客や販促といった売上に直結する施策へ充てられるようになります。
ツール選びは機能の多さより、自社の運営モールや物流会社との連携、受注件数に対する費用対効果を軸に判断するのが現場では確実です。まずは無料トライアルで実際の操作感を確かめるところから始めてみてください。
なお、各ツールの料金は変更される場合があります。最新の料金は各ツールの公式サイトにてご確認ください。
